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“怒り”をコントロールする「アンガー・マネジメント」

2018-11-21


執筆:玉井 仁(臨床心理士)
怒りをコントロールするにはどうしたらよいのでしょうか。
怒りの感情を表に出したとたん、怒りにさらに勢いがついてしまう人がいます。
本当はそこまで怒るつもりはなかったのに、つい激昂してしまい、後から自己嫌悪に陥る……。

しかし、適切なトレーニングをすれば、怒りをコントロールすることは可能です。
それを「アンガー・マネジメント」と呼びます。
ここでは、ある女性のケースを通してアンガー・マネジメントについて考えてみましょう。

1.大切なものを失うことから始まった

みどりさん(40代・仮名)のアンガー・マネジメントの取り組みを、紹介しましょう。
みどりさんは幼少期に、毒親と呼ぶべき激しく攻撃的な親との関係で苦しみました。

その影響は深く、大人になってから「境界性パーソナリティ障害」の診断を受けるまでになりました。
怒りのコントロールができず、しばしば怒りに振り回されてしまう彼女は、夫と子供という、最も大切なものまでも失ってしまいます。

そこから、みどりさんはアンガー・マネジメントに取り組むようになりました。
アンガー・マネジメントにおいては、怒りを「キャッチボールのボール」になぞらえることができるかもしれません。

ここでは、みどりさんが、「怒りのボールを恐れない」で生活できるまでになる過程を見ていきたいと思います。

2.「心の筋肉」がついた実感はあるものの…

以前は怒りという感情の持つエネルギーに振り回されていたみどりさん。
カウンセリングを受ける中で、怒りという感情のボールを少しずつ受け止められるようになってきました。

その頃になると、みどりさん自身も、感情を制御する「心の筋肉」がついたと実感できるようになったと言います。

例えば、以前は夫や子供と離別してから、街でよその子供の姿を見るだけで嫌な気分になっていました。

子供の姿を見た時に、「私は子供を捨てたんだ」と考え、不快さのきっかけを作り、「子供は勝手だ」といら立ちを募らせていく自分を観察できていたし、それがちょっと偏っているな、と理解できてもいました。

しかし、そうわかっていても、休日にはできるだけ親子連れがいるような場所に出かけるのを避けていました。
好きだった野球観戦にも行かなくなりました。

3.友人の支えで怒りに対する恐怖を克服

ある時から、「怒りや不快を感じないようにするために、いつまで好きなことを制限すればいいんだろう」と考えるようになりました。
でも、一人でいきなり親子連れがいるところに行くのは怖かった。

そこで、信頼できる友人A子さんと一緒に出かけるという取り組みを、少しずつ始めました。
A子さんは、みどりさんが苦しくなって「怒りのボールを投げまくる」ことを理解してくれ、それでもみどりさんから離れていかなかった貴重な友人です。

「子供は勝手だ」と怒るみどりさんに対して、A子さんは「子供が勝手じゃなかったらやばいよ」といさめてくれました。
子供好きなA子さんに誘われるかたちで、みどりさんは子供相手のボランティアに参加するようになりました。

4.怒りをコントロール :怒りを受けとめる=相手を受けとめる

そんな取り組みが実を結び、今は子供たちがいる場所に行くことを、みどりさんは恐れるどころか楽しみに感じられるようになりました。
子供の自由奔放さに、時にいら立ちを覚えることもあります。

でも、そんな自分を見つめて、
「これだけトレーニングしても、まだ怒りって出てくるんだ」
と思えるようになったというみどりさん。

怒りを感じながらも、それに振り回されずに、笑って「何やってるの」と言えるようになりました。
これもまた、感情を受け止める心の筋肉を鍛えることなのだ、と考えるようになったと言います。

5.感情からメッセージを受け取る

これまで、みどりさんの取り組みを例に、怒りについて考えてきました。

みどりさんの怒りには、比較的わかりやすい側面もありました。
しかし、時に怒りの背景には、気づきにくい別の感情や考えが隠れ、影響を及ぼしていることがあります。

怒りを恐れず、怒りに率直に向き合うことで、私たちはそこからたくさんのメッセージを読み取ることができます。

それは、喜びや悲しみといったほかの感情も同じです。
感情に振り回されないことで、豊かなメッセージを受け止められるようになれる、そんなことを感じてもらえたら幸いです。
(この事例は複数の実例を基に構成しています。また、プライバシー保護のため一部を脚色しています)

<執筆者プロフィール>
玉井 仁(たまい・ひとし)
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター カウンセリング部長。臨床心理士、精神保健福祉士、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。著書に『著書:わかりやすい認知療法』(翻訳)など


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