執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
監修:三原 武彦(小児科医、三原クリニック理事長、みはら子育て支援センター長)
赤ちゃんの笑顔は周囲を幸せな気持ちにしてくれますよね。
赤ちゃんには「新生児微笑」と呼ばれるものがあり、出生後すぐであっても自分から笑うことがあります。
これは周囲との関係で笑っているのではなく、顔の神経の反射であると考えられています。
その笑顔は海外では「エンジェルスマイル」と言われるほど愛らしいものです。
一方で、自分の子どもがなかなか笑わなかったり、写真を撮ってみても笑顔が1枚もなかったりすると不安になってしまうもの。
「笑わない赤ちゃん」にはどのような原因が考えられるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
1.赤ちゃんは周囲の人の表情をまねて「笑う」
出生後の赤ちゃんは周囲との関係ではなく、顔の反射で笑うことがあります。しかし、赤ちゃんは次第に自分が笑顔になることで周囲も笑顔で反応することを覚えていくのです。

そうして生後2か月以降には大人が笑うと笑顔で返す、ということができ始めます。
これは「社会的微笑」と呼ばれるものです。
赤ちゃんは成長とともに視力が発達し、相手の表情の変化を感じ取ることができたりするようになります。
そうしたなかで、赤ちゃんの脳内では、相手の笑顔と同じ表情をつくるように指令が出るのです。
そのため、周囲の人が笑顔で接する機会が多ければ多いほど赤ちゃんは笑うようになります。
赤ちゃんは、母親や周囲の人たちの表情をまねることで笑顔を習得していくのです。
どうしたら笑うのかは、赤ちゃんによって違います。
あやす人の声や肌に触れる感覚など、赤ちゃんの五感を刺激することが大切です。
赤ちゃんの顔に触れたり「いないいないばあ」をしてみたりと、色んなことに挑戦してみてください。
なによりも大事なことは、大人も笑顔で接することです。
2.笑うのを諦める「サイレントベビー」とは
サイレントベビーとは、赤ちゃんが泣く、笑うなどの表情に乏しく、無表情な状態のことをいいます。
サイレントベビーのまま成長すると、発語が遅くなったり、コミュニケーション能力が低くなったりするだけでなく、様々な心の病気が出てくる可能性があります。
サイレントベビーになる原因は、長い期間人に触れず、放置されたことにあります。
泣いてもあやしてくれず、自分の欲求(排便、排尿、ミルクが欲しいなど)に応えてくれない状態が繰り返し起こると「自分が泣いても何もしてくれない」ということを覚えてしまい、泣くのをやめてしまうのです。
もちろん赤ちゃんにとっては心に負担がかかるため、段々泣かない、笑わない、といった状態に変化していきます。
赤ちゃんがよく笑うようになるためには、生後2カ月頃までにどのくらい親が赤ちゃんに対して多くの愛情をかけて、手をかけていられるかがカギとなります。
とはいえ、育児以外のことが忙しくて赤ちゃんに構う時間がとれなかったからといって、すぐにサイレントベビーになるわけではありません。
いくら忙しくても赤ちゃんに笑顔を見せる時間はあるでしょう。
笑顔を見せてから「今忙しいからちょっと待っていてね」などと声をかけるようにしましょう。
3.笑わない原因は「発達障害」の可能性も
赤ちゃんが笑わないのは、発達障害のひとつの徴候と考えられます。発達障害とは、主に生まれつきの脳機能障害が原因で、乳幼児期に起こる発達の遅れです。
精神障害や知能障害を伴う場合もあります。
発達障害は、症状の特徴によりいくつかに分類され、障害が合併していることもあります。
現在、発達障害は「広汎性発達障害」「学習障害」「注意欠陥多動性障害」の3種類に分類されています。
自閉症やアスペルガー症候群は、「広汎性発達障害」に含まれます。
発達障害児は、自分の気持ちを表情に出しません。
人に興味や関心がないので、表情が乏しくほとんど笑わないのです。
アスペルガー症候群の子どもも、周囲の人と目を合わせようとしないので、笑わない傾向にあります。
4.対策法は?
発達障害児の養育には、その子の持っている力を引きだし、日常生活を送れるようにするために手助けすることが重要です。こうすることで、将来は社会的な自立への支援になります。
専門家の元で、療育機関やプログラムなどで、その人にあった療育を行いましょう。
赤ちゃんに接するなかで重要なのは、時間の長さではなく「質」です。
ただ赤ちゃんのそばにいるだけでは、意味がありません。
赤ちゃんに話しかけ、抱っこをし、笑いかけ、赤ちゃんの欲求に答えてあげることで赤ちゃんの心も成長するのです。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
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