執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
運動不足からくる肩こりや腰痛、体重の増加といった身体の変化に悩まされ、「そろそろ運動を始めよう!」と意気込んでいる人もいるのではないでしょうか?
しかし、いきなり激しい運動を始めると、ケガなどさまざまなトラブルに見舞われることも。
今回は、普段から運動していないことによって起こるトラブルについてみていきます。
1.運動不足とはどういう状態?
「国民健康・栄養調査」では、「週2回以上、1回30分以上、1年以上」運動している人のことを「運動習慣者」と定義しています。平成27年度の調査では、運動習慣のある者の割合は、男性37.8%、女性27.3%という結果でした。この結果をみると「多くの人は運動不足である」といえるのではないでしょうか。
2.運動不足によるトラブル
私たちの身体の機能は、一定の年齢をピークに加齢によって徐々に衰えていきます。さらに、定期的に運動をしないことでも、身体の機能は少しずつ衰えてしまいます。
筋肉は使われないことで衰えてしまいますが、筋力以外にも運動不足によって全身の持久力の低下、筋持久力の低下、柔軟性の低下が起こり、次のようなトラブルを招きます。
2-1.筋肉痛
運動不足で身体の機能が衰えた状態で運動すると、自分では「大したことはない」と思っている運動量や負荷であっても、筋肉や関節などの運動器を使いすぎてしまっています。
その結果、筋肉痛や関節炎を起こしやすくなるともいわれています。
2-2.アキレス腱断裂や肉離れ
2-3.転倒やケガ
運動中に起こるケガは、普段から運動している人にも起こるものですが、運動不足が要因となることもあります。
3.運動によって起こる突然死って?
運動習慣がない人の中には、血圧や血糖値が高かったり、脂質異常がみられる人もいるのではないでしょうか?高血圧・糖尿病・脂質異常症などは、動脈硬化を起こすリスクを高め、自覚症状がなくても、心臓に血液を送り出す血管(冠動脈)がもろく、狭くなっている可能性があります。
その状態で急激な運動をして心臓に負荷をかけると、心臓に酸素が十分にいかなくなったり(狭心症や心筋梗塞など)、不整脈が起こることがあります。そして、最悪の場合、突然死に至ることもあるのです。
とくに運動不足が続いている場合、内臓脂肪が蓄積され、高血圧、糖尿病、脂質異常症を起こしていることもあります。そのような場合、「健康のため」と急激に運動を始めることにはリスクがともないます。
では、このようなトラブルを回避するためには、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか?
4.トラブルを予防するには?
自分の健康状態をチェック、体調の管理
持病がある人はまず、医師に自身の身体が運動を行える状態にあるかどうかの相談をしましょう。持病がない方も、定期的に健康診断を受け、健康状態をチェックすることが大切です。
また、疲れがたまっていたり、睡眠不足にも関わらず、健康のためにと無理をすることも身体には負担となります。
運動を行うためにはしっかりとした休養をとった上で無理のない運動を心がけましょう。
5.自分のレベルや体力に応じた運動
今回紹介したようなトラブルを防ぐために、急な激しい運動は避けましょう。昔スポーツをしていたという人でも、今も同じように動けるわけではありません。ハードなジョギングやサッカー、テニスといった負荷が大きいものからはじめるのではなく、自分の今の体力や運動能力に応じた運動をするようにしましょう。
まずは、軽く息が上がる程度のウォーキングなど負荷の少ない運動からはじめることがおすすめです。
また、準備運動やクールダウンを入念に行うこともケガの予防につながります。
●普段からの運動習慣
運動のトラブルを気にして運動をしないのではなく、運動ができるような身体を作っていくことが大切です。運動は、生活習慣病をはじめとする疾病を予防し、活動的な生活を送るために必要な基礎体力を増加させることができます。さらに、爽快感や楽しさを得ることもできますから、積極的に取り入れたい習慣といえますね。
【参考】
・厚生労働省『国民健康・栄養調査』(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000142359.html)
・鵤木秀夫編『健康づくりのための運動の科学』化学同人
・山崎元監修『中高年のためのスポーツ医学Q&A』世界文化社
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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