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動物の持つ癒しの力「アニマルセラピー」

2017-01-12


執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
「アニマルセラピー」という言葉を聞いたことはありませんか?
なんとなく「癒しを目的とした動物とのふれあい」をイメージする方も多いでしょう。実際にはどのようなことが行われているのでしょうか。
今回は、そんなアニマルセラピーについて詳しくご紹介します。

■犬だけじゃない!アニマルセラピーの歴史
アニマルセラピーとは、「動物を用いた治療・療法」のことをいいます。セラピーには本来「薬物や外科的処置を必要としない治療・療法」という意味があり、アニマルセラピーも元々は治療法のひとつとして用いられていました。
治療の一環として動物が用いられてきた歴史はかなり古く、古代ローマ時代にまで遡ります。
この当時、負傷兵の機能回復を目的に(ホース・セラピー)が用いられていたという記録があり、これがアニマルセラピーの起源とも考えられています。
その後、19世紀ごろには乗馬が神経障害の治療に効果があると考えられ、意識的に活用されるようになりました。アニマルセラピーと聞くと、犬をイメージする方が多いかもしれませんが、犬が本格的に用いられたのは20世紀以降になります。
このほか、1970年代からは精神的な治療としてイルカによるセラピー(ドルフィン・セラピー)も行われています。
このように、犬以外にもさまざまな動物が活躍しています。ただ、トレーニングのしやすさや身体の大きさ、数などの理由から、現在では犬が用いられることが多いようです。

■アニマルセラピーの種類
冒頭でお話ししたように、もともとアニマルセラピーは治療として行われていました。
ところが、近年になって動物をパートナーや仲間として認識する考え方が普及してきています。これにともなって、「アニマルセラピー」も広い意味でとらえられるようになってきました。
日本動物病院協会(JAHA)は、アニマルセラピーの活動として次の3つをあげています。

1.AAA(Animal Assisted Activity;動物介在活動)

人間と動物がふれあう活動のこと。動物とのふれあいやレクリエーション活動によって、精神的な安定を図ったり、QOL(Quality Of Life;生活の質)の向上をすることが目的。日本で一般的にイメージされるアニマルセラピーの活動。

2.AAT(Animal Assisted Therapy;動物介在療法)

医師などの医療スタッフが治療の一環として動物を介在させて行う治療(または補助治療)。精神的・身体的な機能の回復、社会的機能の向上など、患者に合わせた治療を行い、治療後は効果がどれくらい出ているかを評価する。

3.AAE(Animal Assisted Education;動物介在教育)

動物とのふれあい方や命の尊さを子どもたちに学んでもらうことを目的とした活動。たとえば、動物と一緒に小学校を訪問するといった活動があげられる。
JAHAでは、これら3つを総称して「CAPP(Companion Animal Partnership Program ;人と動物のふれあい活動)」と呼んでいます。では、アニマルセラピーにはどのような効果があるのでしょうか?

■アニマルセラピーの効果
これまでの研究では、次のような効果があるのではないかと考えられています。


身体機能を回復させる効果

ここまでご紹介したように、ホース・セラピーには身体機能を回復する効果があることがわかっています。とくに、脳性麻痺などによって神経障害が残る患者に対して、平衡感覚を改善したり、筋肉の異常な緊張状態を軽減する効果が認められています。


血圧を低下させる効果

ある研究では、犬とふれあうことによって血圧が低下したという結果が出ています。これは、動物と触れ合うことでリラックスされて副交感神経が刺激されることによるものと考えられています。
このほかにも、感情を司る脳の偏桃体に作用するという説もありますが、検証が不十分ともいわれています。今後さらなる研究が必要といえそうです。


癒しや安らぎの効果

動物とふれあうことで、「オキシトシン」が分泌されるといわれています。「オキシトシン」には、安らぎや幸福感をもたらす効果があります。
そのため、動物とふれあうアニマルセラピーによって、癒しや安らぎを得ることができると考えられています。


カタルシス効果

たまった感情を表現することで心が浄化されることを「カタルシス」といいます。
動物は、人が話したことに対して否定せずに聞いてくれるため、安心してマイナスの感情を吐き出すことができます。それによって、対人関係で溜まった疲れを解消する効果があるといわれています。

■多方面で活躍する動物のチカラ
アニマルセラピーの効果は、まだまだ研究段階のものが多く、はっきりしたことがわからないことも多いといわれています。しかし、実際にアニマルセラピーは、さまざまな場面で活用されています。
たとえば、臨床の現場では自閉症患者認知症患者の補助治療として用いられています。また、世界の紛争地域ではPTSD(Post Traumatic Stress Disorder ;心的外傷後ストレス障害)患者の治療の一環で取り入れられています。
日本でも、捨て犬として殺処分されかけた犬が、セラピードッグとして育成され、介護施設を訪問して老人に活力を与えています。
また、震災などの被災地でも多くのセラピードッグが活躍しています。とくに東日本大震災のときには、行き場のなくなった飼い犬が野良犬と化してしまい、さらに子どもを産んでいるという実態がありました。
ですがその後、訓練を受け、現在はセラピードッグとして活躍している犬もいます。
地震をはじめとする災害大国の日本では、これからますますアニマルセラピーが活用される機会が増えてくることでしょう。その一方で、動物虐待や捨て犬・猫などによる殺処分の問題も後を断ちません。
アニマルセラピーが今後より一層普及していくためにも、動物から一方的な恩恵を受けるのではなく、互いに共生していくことが必要といえるでしょう。
<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供


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